運動神経は存在しない
日常生活の中で、慣用句的に「あの人は運動神経が良い」とか「あいつ運動神経悪いから・・・」とかいう
表現はよく使われます。しかし、実際には運動神経という神経は存在しません。
運動神経が良いとか悪いとかは神経のことではなく運動に関する脳の伝達システムや学習機能の優劣
を表現したものなのでしょう。運動神経が良いというのは脳がイメージしたり描いた動きやフォームをスム
ーズ筋肉に伝えられ、その通りに動くことができる人のことをいいます。この頭のイメージした動きを表現
していくのに深く介在するのは大脳ではなく小脳です。
運動指令は電気信号として運動連合野~運動野~脊髄~筋肉へと伝えられますが、それらは決して
単純なものではありません。例えば空手やキックボクシングなどで対戦相手に回し蹴りを放つ場合、相手
との距離、当てる位置、蹴りのタイミング、膝、股関節の角度、蹴りを打ち込む方向・・・etc、数えきれない
ほどの情報と緻密な計算が必要になります。こうした指令を脳がその都度毎回行うのは殆ど不可能です。
それ故、ある程度「動き」をパターン化&自動化して基本動作の内部モデルを蓄積していきます。
この動作の内部モデルパターンを多く持つことこそ運動神経の良さに繋がってくるという訳です。
スポーツにおける繰り返しの練習、武道における稽古とは、この内部モデルパターンを小脳に浸透沈着
させているということなのです。
空手や剣術などにおいて繰り返し繰り返し型や形、コンビネーションを行うことは脳からの命令を1セット
動作としてスムーズに実行するために必要不可欠なことなのです。ですから、この内部モデルを持たない
人というのは、ぎこちない動作になってしまうという訳です。
ベーシックな運動の内部モデルは幼児期にほぼ形作られてしまうため、体を使った遊びやスポーツなどは
早い時期に体験させていくことが重要になってくるのです。