抗生物質って???~現代における抗生物質とその効果~
今回の持ち回りブログは中野カイロプラクティックオフィスhttp://naoru-minna.com/、薬袋先生の記事になります。
皆さんは「20世紀の発見の中で人類をもっとも幸福にしたものは何ですか」と尋ねられては何を思い浮かべるでしょうか?当然いろいろあることと思います。
上記の質問は2000年に読売新聞社が行ったアンケートだそうです。
「今世紀作られたものの中で、人類を最も幸福にしたものは何か?」。
そのアンケートの回答で一番多かったのは、「ペニシリン」だそうです。
「ペニシリン」とはアオカビから取れる抗生物質です。
抗生物質は、菌類が自分の餌を確保するために、自分に近寄ってきた他の微生物を追いやる時に作り出す物質でした。
これを抽出して菌や細菌をやっつけることのみ使うようになったわけです。
20世紀初頭、今でこそ生活習慣病の1つ「ガン」が死亡率のトップですが、戦後間もなくは、感染症が死亡率のトップでした。
明治期などはあれほど戦争があったにも関わらず、コレラ菌による死亡者数だけで、戦死者の3倍になっていたといわれています。
こんな20世紀だからこそ、最初に発見された既往性物質であるペニシリンが20世紀で人類を最も幸福にしたものに選ばれたのでしょう!もしくは、ご年配の回答者が多かったのかもしれません。
近年は化学的にこの抗生物質を合成できるようになっていますね。
この化学的に作られた抗生物質を抗菌剤や抗菌薬といいます。
これら二種類を含めて抗生物質と呼ばれているわけです。
さて、ペニシリンは1928年にイギリスの細菌学者フレミングによって発見されました。
1940年代後半から医療の現場ではよく使われるようになります。
それにしても、アオカビからこんな物質を取り出すなんてすごいですよね!!
このさまざまな病気に有用な抗生物質を探すために、世界の感染症学者はドブさらいや糞の中の微生物の研究にいそしんだといいますから、頭が下がる思いです。
日本では、特に黄熱病や梅毒を発見した野口英世、破傷風の発見者である北里柴三郎、赤痢菌の志賀潔などの世界に名だたる学者を輩出しています。
当時の死亡原因を考えるとき、感染症への力の入れようはうなずけるものがあります。
しかし、そんな先人の努力の結晶である抗生物質が菌類に対して、徐々に効かなくなってきていることをみなさんはご存じのことと思います。
それどころか、一端はなくなったともいえる肺炎が2003年には日本の死亡率で第4位となっており、約10万人の人が肺炎で死んでいるのです。
(文春新書『薬が効かない』著者 三瀬勝利 2004年厚生統計協会の資料より)
肺炎はペニシリンによって克服されたはずでした。
しかし、抗生物質が効かない肺炎菌が増えてきたのです。
さまざまな菌や細菌たちは、抗生物質を分解させたり、変化させたり、はたまた自己変革したりしているそうです。
大量に、そして必要以上に医療現場で使われてきたために、耐性菌が増えてしまっているのです。
さらに、必要以上に使われるのは医療現場だけではありません。
家畜の餌、家畜用のクスリ、養殖、農業にも大量に使われています。
実は日本は世界一の抗生物質使用国なのです。
そんな中、細菌たちは生きようと必死です。
抗生物質を大量に使われても、わずかに生き残った細菌たちが、いわば抗生物質に対して、免疫力をつけてしまうという訳です。
どんなに薬物を開発しようとキリが無い気がしてきますね。
さらに、抗菌グッズやさまざまな抗菌剤の使用が耐性菌を増やしています。
抗生物質は大量に使われるようになって約10年で効果が50%になり、半数が耐性菌となって抗生物質が効かなくなるという統計があります。
(朝倉書店『薬剤耐性』三橋進より)
必要以上の清潔志向と細菌を有害と決め付けた排除は、私たち自身を却ってを苦しめているのではないでしょうか。
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